そーせい|プライム市場への新規上場までの道のり〜財務分析からM4作動薬HTL16878の契約一時金を踏まえて〜


現在東証マザーズ市場に上場しているそーせいは2022年後半のプライム市場への新規上場を目指しており、そのためにはプライム市場の新規上場基準を満たす必要があり、具体的には今期(2021年12月期)の経常利益(少数株主損益は単純化のため加味しない)8.8億円以上または売上高100億円以上を計上する必要があります。

一から見ていくと、プライム市場の新規上場基準は下図の通りであり、形式基準と上場審査の2種類の審査を通過することで承認まで辿り着くことが出来ます。

出典:市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について-第二次制度改正事項に関するご説明資料-(東京証券取引所)

そーせいの様な継続的上場企業であれば上場審査の審査項目をパスすることは難しくなく、形式基準を満たすことにより主眼が置かれます。

そーせいの2020年12月期の経営実績をプライム市場の形式基準に照らし合わせると、「経営成績」のみが未達成であることが分かります。

題目:プライム基準に対するそーせいの状況 作成:バイオテックレポート

そして、他の項目が未達成となる可能性が非常に低いことから、プライム基準の経営成績を達成するために、今期の経常利益8.8億円以上(2020年12月期と合算して25億円以上)または売上高100億円以上を計上する必要があるという流れです。

それでは、これら2つの目標を達成するために何が必要なのかを推定していきます。

題目:財務データ 作成:バイオテックレポート

上図は過去2期分の財務データとその平均値であり、その平均値を用いて経常利益8.8億円を達成するための売上高の目安は85億円となります。

なお、そーせいが公表している2021年12月期の研究開発費予想40~50億円と一般管理費予想18~23億円の最大値合計73億円と、同平均値合計の75.6億円が同程度のため、ここではより値の大きい平均値を採用しています。

そして、売上高の大小の観点から100億円の売上高を達成することは第2目標となるため、そーせいが売上高85億円(第1目標)を達成するために絞った必要事項を考えていきます。

題目:売上高の詳細 作成:バイオテックレポート

上図(売上高の詳細)からも分かる通り、そーせいは安定したロイヤリティ収入を計上し、さらに毎年僅かながらも成長していることが分かります。

ロイヤリティ収入の特徴として前期と後期の額がほぼ一定であることから、2021年12月期の同収入は23億円以上見込まれます(2021年12月期第2四半期の同収入が11.7億円より)。

その他の売上高は研究開発受託によるものであり、Pfizer社、Genentech社、武田薬品工業社など、多岐にわたるパイプラインの開発に今後も携わることを考慮すると、今期も10億円程度の売上高は十分に見込むことが可能です。

医薬品販売に関しては今期の計上は見込んでいません。

直近4期で2019年12月期でのみ医薬品販売での売上を計上していますが、これはオラビが日本国内において承認された際の販売に関わる売上高と考えられ、これは2019年12月期有価証券報告書の売上原価に関する一文「売上原価には、契約に基づき顧客に提供される研究開発受託サービスに関する人件費及び研究施設の減価償却費並びに消耗品費などの直接経費及び2019年2月に発売された「オラビ®錠」販売に係る直接経費を計上しております。」からも読み解けます。

以上より、そーせいは売上高85億円を達成するために、マイルストン収入及び契約一時金によって52億円を計上する必要があることが分かりました。

そして今期の前半が終了した時点でそーせいは15.5億円の同収入を計上していることから、今期後半において残り36.5億円の計上を達成しなくてはなりません。

Pfizer社やGenentech社など、前記した多岐にわたるパイプラインの初期マイルストンは1件あたり1~2億円と少額であることが推定されるため、30億円前後の導出契約の締結を無くして同目標の達成は困難です。

そーせいは現在M4作動薬HTL16878を含めたムスカリン作動薬パッケージの導出交渉を行っており、今期中の契約締結を見込んでいます。

しかしながら、プライム市場への新規上場をも見込む場合、その契約一時金は少なくとも30億円は求めたいところであり、30億円未満であった場合はプライム市場への新規上場の可能性に懸念を示すことになります。

 

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