そーせい|2021年12月期第2四半期決算説明会を終えて〜SARS-CoV-2プロテアーゼ阻害薬SH-879〜


2021年8月13日に実施されたそーせいグループの2021年12月期第2四半期決算説明会ではいくつか重要な情報が公開されました。

特にAbbVie社から今年1月に返還されたムスカリン受容体作動薬(M1、M4、M1/M4デュアル作動薬)の開発進捗に関するコメント(2021年末までの導出契約締結を見込むこと)がされたことがどう説明会のハイライトかと思います。

そして、ムスカリン受容体作動薬の今後の進捗に関しては同説明会中において十分に説明がなされているため、本記事ではSARS-CoV-2プロテアーゼ阻害薬であるSH-879について言及します。

プロテアーゼ阻害薬はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の治療薬としても用いられている医薬品であり、ウイルス感染後の体内増殖を抑える効果があります。

そもそも、ウイルスが体内で増殖するためには大きく2つの工程を踏む必要があり、1つ目が増殖に必要なタンパク質を(感染細胞に命令することによって)生み出すこと、2つ目が生み出したタンパク質を加工してクローンウイルスを形成することです。

この工程を例える際によく用いられる表現がプラモデルの製作であり、上記1つ目の段階がプラモデル製作キットを手に入れること、2つ目の段階がプラモデルの部品を型から切り離し組み立てること、に該当します。

そして、生み出したタンパク質を加工する際に必要なハサミをプロテアーゼと呼び、Covid-19は主に2つのプロテアーゼを保持していることが分かっています。

要するに、プロテアーゼ阻害薬とはウイルスが増殖工程のタンパク質加工の際に利用するハサミ(プロテアーゼ)を使えなくさせる医薬品であり、SARS-CoV-2プロテアーゼ阻害薬はその対象がCovid-19ということを意味します。

それを踏まえた上で、SH-879の立ち位置を考察します。

出典:2021年12月期 第2四半期(1-6月)決算説明資料

SH-879の代表的な競合開発品はPfizer社のPF-07321332と塩野義製薬社のS-217622の2つです。

これら3製品の人間を対象とした有効性のデータは未知数ですが、どの製品も経口剤であり、医薬品の保管と投与が容易に行えることを開発の条件としていることが伺えます。

国家による初期・軽度感染者に対する医療戦略として、経口剤のCovid-19治療薬は期待されていることでしょう。

出典:2021年12月期 第2四半期(1-6月)決算説明資料

同説明会資料の「当社のMPro阻害剤SH-879は、COVID-19の経口治療薬として開発への期待が高まる」では、Pfizer社のPF-07321332とSH-879の比較を行っています。

なお、Mproはメインプロテアーゼの略であり、Covid-19の2つのプロテアーゼの内、ハサミの役割の大部分を担うプロテアーゼをメインプロテアーゼと呼びます。

同資料では薬物動態試験の結果を開示しており、資料上図ではPF-07321332とSH-879のプロテアーゼ阻害作用の効果は同等であることが分かります。

資料中図ではSH-879のウイルス阻害作用と毒性試験の結果を示し、人に感染するコロナウイルスであるHCoV-OC43とHCoV-229Eを対象とした同試験では十分な阻害作用を示していると思います。

なお、同試験では人が日常的に感染するコロナウイルス(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1の4種が存在する)を用いており、コロナウイルスの中でも重症急性呼吸器症候群コロナウイルスに該当するCovid-19(SARS-CoV-2)を用いた試験ではないことに留意が必要です。

また、SH-879の毒性については、田村CEOも言及した通り、強い毒性は検出されていないと見て宜しいかと思います。

資料下図ではPF-07321332とSH-879のCovid-19阻害作用の効果を示しています。

データを見ると若干PF-07321332の方が効果が高いようにも思えますが、薬物動態試験であることを考えると甲乙付けがたいというのが正直なところです。

開発スピードはどうしてもPfizer社に分があるため、PF-07321332の後塵を拝することはそーせいとしても理解しているところであり、同治療薬の開発はESGプロジェクトと公言していることから、SH-879は価格競争力で勝負をしていくこととなりそうです。

後発開発途上国(パンデミック/エンデミックの状況に関係なく、国連による定義づけに従う)での利益を追わず、低価格販売路線を採用したとしても、そーせいの現在の売上規模に対しては大きなインパクトになることは確かだと思います。

そのため、Pfizer社、塩野義製薬社に比べて規模の小さいそーせいが開発競争で不利なポジションに立たされているものの、将来リターンを考えると割に合う開発戦略と考えたことと思います。

 

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