GNIは2021年7月29日、「(開示情報の経過)中国におけるF351の第3相臨床試験許可申請承認に関するお知らせ」と題し、中国におけるF351の肝線維症フェーズ3治験の実施許可を取得したことを報告しましたが、その報告がGNIの株価の大幅な下落を引き起こしました。
同報告はF351による肝線維症治療薬の開発が前進したことを示すことのため、本来であれば今回の様に一日で16%もの大幅な下落に繋がることはありません。
下落の理由を探ると、GNIがこれまで行ってきたF351の同治療薬開発に関する投資家心理の誘導で保っていた株価推移の決壊が一番に上げられます。
GNIはF351の肝線維症治療薬の開発ですが、正確には慢性B型肝炎ウイルス感染による肝線維症に適応を絞っています。
そして、開発状況について、2018年9月25日、2019年8月30日、2020年8月17日、2020年10月16日、2020年10月23日、そして今回の2021年7月29日と計6回に渡り重要な開示情報を公表しました。
2018年9月25日の「中国におけるF351第2相臨床試験中間解析において良好な結果を報告」ではF351の肝線維症フェーズ2治験の中間解析結果を報告しましたが、この時点では詳細な解析結果は開示されず、F351がプラセボ群と比較して治療効果があったこと、さらに、同投与量90mgの投与群が、同投与量60mg、120mgに対して治療効果が高かったことを報告しました。
2019年8月30日の「中国における F351 の肝線維症治療薬としての 第2相臨床試験最終データ収集終了のお知らせ」では、『当社グループは、今後、本臨床試験で行われた肝生検の病理データを含む本試験の結果解析や NMPA に求められた非臨床試験を終了し、その最終結果を公表すると共に国際的な学会にて発表する予定です。それまでの間、第3相臨床試験の実施方法や早期条件付き承認の可能性を含め、NMPA の医薬品評価センターと、今後の承認プロセスを相談してまいります。(同開示情報より)』の一文において早期条件付き承認の可能性に言及しました。
これは慢性B型肝炎ウイルス感染によって引き起こされる線維化を伴う肝炎が死に直結する肝硬変へと進行する疾患であること、そして、肝硬変になった場合の治療法が肝移植に限られることを根拠にしたものです。
2020年8月17日の「F351の第2相臨床試験の完了報告ならびに良好な試験結果の概要について」では、プラセボ群に対して、F351が同フェーズ2治験の主要評価項目の指標であるIshak線維化スコア(線維症や硬変の重症度を1〜6段階で測定することで肝線維化の進展度を診断するもの)を統計学的に有意に改善したことを初めて示しました(p=0.025)。
こういった背景があったため、慢性B型肝炎ウイルス感染による肝線維症に対するF351の早期条件付き承認の期待が非常に高まっていました。
しかしながら、2020年10月16日の「(開示情報の経過)F351の第2相臨床試験の完了を踏まえた今後の戦略的方向性について」において、慢性B型肝炎ウイルス感染による肝線維症フェーズ3治験の実施に言及したことから、膨らんでいた早期承認の期待が萎むこととなりました。
ただし、後期肝線維症である肝硬変に対しては引き続き早期条件付き承認の可能性を探っている状況です。
2020年10月23日の「(開示情報の経過)中国における肝線維症治療薬F351の第2相臨床試験の結果について」では、ついにF351による慢性B型肝炎ウイルス感染による肝線維症フェーズ2治験の詳細な結果が公表されました。
2020年8月17日の「F351の第2相臨床試験の完了報告ならびに良好な試験結果の概要について」で既知の通り、F351はプラセボ群に対してIshak線維化スコアを統計学的に有意に改善(p=0.025)していましたが、90mgを除いた2つのF351投与群(60mg、120mg)では統計学的に有意な改善は検出されず、その点が一つの懸念材料となりえました。
その他、肝硬変患者(Ishak線維化スコア=6)に絞った追加解析の結果も発表しており、そちらは非常に強力な結果を示しました(15人中12人がIshak線維化スコアが1以上改善【p=0.04】)。
上記解析結果を踏まえると、追加解析のデータ数が少ないことは気がかりなものの、肝硬変治療薬としてのF351の早期条件付き承認の可能性は依然として残り続けていた状況です。
そして今回(2021年7月29日)の「(開示情報の経過)中国におけるF351の第3相臨床試験許可申請承認に関するお知らせ」により、GNIは投資家に対して肝線維症フェーズ3治験の実施が確定し、同治療薬としての早期条件付き承認の可能性が潰えたことを示しました。
前記した通り、肝硬変治療薬として早期条件付き承認を得る可能性は残されていたものの、仮にそれが認められるのであればプロトコル作成の兼ね合いにより、順序として同フェーズ3治験開始の報告よりも先に決定されるはずです。
そのため、F351の肝硬変含む肝線維症治療薬の早期条件付き承認の可能性は潰えたと考えました。
そして、2019年8月30日から2年間もの間、F351の肝線維症治療薬としての早期条件付き承認の可能性を期待してGNI株を保有していた大勢の投資家の落胆が、今回の同社株価の大幅な下落を引き起こしたと考えています。
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