オンコセラピーは2021年7月16日、「食道がんに対するがん特異的ペプチドワクチンS-588410 第III相臨床試験完了に関するお知らせ」と題し、S-588410による食道がんフェーズ3治験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)に対しての有効性を示すことが出来なかったと発表しました。
オンコセラピーが開発を進めているがんペプチドワクチンの作用機序は2つの段階を経ており、CTL(細胞傷害性T細胞)への固有ペプチドのインプット、そして、固有ペプチドをインプットしたCTLの増殖です。
ペプチドワクチンの治療概念は大手製薬会社が積極的な研究・開発を行っているCAR(キメラ抗原受容体)-T細胞療法と類似していますが、T細胞へのインプットおよび増殖を人工的に行うCAR-T細胞療法と比較して、これらステップを体内の生体メカニズムを利用して行うペプチドワクチンは有効性(特にパワーに関して)に強い疑問が持たれている背景があります。
今回の発表により、S-588410は主要評価項目である無再発生存期間(RFS)では統計学的な有意差をもって期間を延長することは出来ませんでしたが、食道がん発生部位別、または、リンパ節転移グレード別の部分集団解析では一定の発生部位において全生存期間(OS)を有意に延長したことが分かりました。
さらに、副次評価項目であるCTL誘導率ではS-588410投与により高い誘導率が確認されているとのことから、固有ペプチドインプットCTLの絶対的な数が足りていなかったと考えられ、これは長らく懸念されているペプチドワクチンのパワー不足と捉えられます。
オンコセラピーはこれまで、1種類のペプチドで構成する第1世代ワクチンのOTS102、複数種類で構成する第2世代ワクチンのOCV-C01、そして、今回の5種類で構成する第3世代ワクチンのS-588410と、計3種類のペプチドワクチンを開発し、全て主要評価項目未達という結果に終わりました。
治療概念が類似し、治療効果の実績が積み上がっているCAR-T細胞療法が新たながん治療法として普及していく中、オンコセラピーが今後もがんペプチドワクチンの開発を進めいくのかに注目です。
*ペプチド:アミノ酸が50個未満2個以上のもの。50個以上結合したものをたんぱく質と言う。
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