Covid-19ワクチンとHGF遺伝子治療薬の価値を低下させたアンジェス株が大幅下落

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 1 創薬企業の相場概況

本日は米長期金利の低下を受けた米国株価指数の大幅な反発により、日経平均株価、および、TOPIX33[医薬品]も大幅に反発しました。

この流れに乗りたかった創薬平均株価でしたが、値上がり銘柄数が思うように伸びず、終値も0.6%高の554円で取引を終えました。

その主たる要因はアンジェスの大幅な下落です。

アンジェスは新型コロナウイルス感染症が世間を賑わせた際、日本国内において真っ先に同ワクチン開発に着手しました。

そのため、開発当初から投資家の同ワクチン開発に対する期待は高まっておりましたが、アンジェスは同ワクチンのフェーズ1/2試験において有効性を示せなかったことを理由に、開発の中止を決定したことを報告しました。




一方で、同フェーズ1/2試験結果に対する期待値が下がっていたことも事実です。

アンジェスはこれまで同試験結果のデータ取得時期について「この夏のうちに海外委託先から正式なデータが上がってくる」としていたものの、先月末には開示時期が半月程度遅れる見通しであると報告しました。

そして、創薬業界における臨床試験のデータ解析のスケジュールに関しては、主要評価項目を達成しているケースでは発表が概ね予定通りなことがほとんどです。

対して、同項目が未達であるケースでは、同結果が与えるネガティブな印象の緩和策としてサブグループ解析や新たな評価項目による追加解析に時間が取られ、発表が遅れることが、過去の創薬株の事例として度々見られます。

そのため、投資家からの期待値が下がり、本日までにある程度の売りをこなしていたため、本日のアンジェス株の下落はストップ安とはならずにすみました。

また、アンジェスは新型コロナウイルス感染症に対する新型ワクチンの開発に着手することを同時に報告しました。




新型ワクチンは経鼻投与製剤であることが特徴です。

経鼻投与製剤では従来の注射剤に比べ、IgG抗体の産生だけではなく、粘膜免疫で重要な働きをするIgA抗体の産生も期待され、投与の簡便性も相まって非常に注目の高い製剤です。

しかし、アンジェスは新型ワクチンの開発に関して、3年間で3百万ドルの予算しか計上しておらず、お世辞にも力を入れているとは言い難く、アンジェスの新型コロナウイルス感染症ワクチン開発は実質終了したと投資家は評価するのではないでしょうか。

さらに、アンジェスはHGF遺伝子治療薬による慢性動脈閉塞症の安静時疼痛を適応とする開発を中止することも発表しました。

同遺伝子治療薬はHGFと呼ばれる肝細胞増殖因子の発現を増加させることで様々な適応症に対する有効性の獲得を目指しておりましたが、今回の開発中止により、同治療薬のパワーに対する疑問が生じました。

加えて、ペプチドリームのHGF代替ペプチドの存在や、クリングルファーマのHGFペプチド製品が競合となり、開発を続けていることから、HGF遺伝子治療薬の注目は低下の一途を辿っています。

そのような中、パワー不足を露呈した同製品に対する期待値の低下は避けられません。

アンジェスはこれまでHGF遺伝子治療薬と新型コロナウイルス感染症ワクチンの2つが主力製品として評価されてきましたが、1日でその両方の価値が大幅に低下しました。

そのため、今後のアンジェスの株価推移は厳しいものになると考えられます。



 2 創薬企業のIR更新情報(前営業日)

【アンジェス】

2022年9月7日の発表について

改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤に関する米国スタンフォード大学との共同研究契約の締結について

新型コロナウイルス感染症(武漢型)向けDNAワクチンの開発中止及び新型コロナウイルス感染症の変異株に対する改良型DNAワクチン並びにその経鼻投与製剤の研究開始に関するお知らせ

HGF遺伝子治療用製品の慢性動脈閉塞症における安静時疼痛の適応追加に向けた国内開発の中止に関するお知らせ

【デ・ウエスタン・セラピテクス研究所】

アナリストレポート/フォローアップレポート(Sessaパートナーズ)

 3 創薬株価指数と主要株価指数

創薬株価指数 終値 前日比(%)
創薬平均株価 554円 +3円(+0.61%)
BR平均株価【大型株】 1,627円 +39円(+2.47%)
BR平均株価【低分子】 661円 +7円(+1.08%)
BR平均株価【低分子(大型株除く)】 318円 +4円(+1.32%)
BR平均株価【ペプチド・タンパク】 593円 +20円(+3.50%)
BR平均株価【ペプチド・タンパク(大型株除く)】 75円 -1円(-1.58%)
BR平均株価【抗体・アプタマー】 225円 -3円(-1.33%)
BR平均株価【再生医療[細胞・増殖因子]】 795円 -2円(-0.28%)
BR平均株価【遺伝子】 287円 -21円(-6.96%)
主要株価指数 終値 前日比(%)
TOPIX33[医薬品] 3,325円 +87円(+2.70%)
NBI* 3,918ドル +112ドル(+2.94%)
日経平均株価 28,065円 +635円(+2.31%)
NASDAQ 11,792ドル +247ドル(+2.14%)

*NBI:NASDAQ Biotechnology Index

 4 創薬株価指数とテクニカル指標





創薬平均株価:ジーエヌアイグループ、アンジェス、オンコセラピー・サイエンス、そーせいグループ、ナノキャリア、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、ペプチドリーム、オンコリスバイオファーマ、リボミック、サンバイオ、ヘリオス、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、Delta−Fly Pharma、ステムリム、メディシノバ、ファンペップ、ペルセウスプロテオミクス、モダリス、クリングルファーマ、レナサイエンス

BR平均株価【大型株】:ジーエヌアイグループ、そーせいグループ、ペプチドリーム

BBR平均株価【低分子】:ジーエヌアイグループ、そーせいグループ、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、デルタフライファーマ、メディシノバ、レナサイエンス

BBR平均株価【低分子(大型株除く)】:カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、デルタフライファーマ、メディシノバ、レナサイエンス

BR平均株価【ペプチド・タンパク】:オンコセラピー・サイエンス、ペプチドリーム、ブライトパス・バイオ、ファンペップ

BR平均株価【ペプチド・タンパク(大型株除く)】:オンコセラピー・サイエンス、ブライトパス・バイオ、ファンペップ



BR平均株価【抗体・アプタマー】:カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、リボミック、ペルセウスプロテオミクス

BR平均株価【再生医療[細胞・増殖因子]】:サンバイオ、ヘリオス、ステムリム、クリングルファーマ

BR平均株価【遺伝子】:アンジェス、ナノキャリア、オンコリスバイオファーマ、モダリス

 4 創薬企業の相場のまとめ




全体
値上がり銘柄数 14銘柄
値下がり銘柄数 12銘柄
変わらず 2銘柄
出来高 2,267万株
売買代金 97億円
時価総額 8,020億円
個別銘柄 終値 前日比(%)
ジーエヌアイグループ 1,464円 +17円(+1.2%)
アンジェス 277円 -39円(-12.3%)
オンコセラピー・サイエンス 63円 -1円(-1.6%)
そーせいグループ 1,699円 +14円(+0.8%)
ナノキャリア 203円 +1円(+0.5%)
カルナバイオサイエンス 910円 +6円(+0.7%)
キャンバス 568円 +16円(+2.9%)
デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 240円 +13円(+5.7%)
ラクオリア創薬 1,093円 +8円(+0.7%)
シンバイオ製薬 711円 +16円(+2.3%)
カイオム・バイオサイエンス 166円 -2円(-1.2%)
キッズウェル・バイオ 263円 -4円(-1.5%)
ペプチドリーム 1,641円 +63円(+4.0%)
オンコリスバイオファーマ 520円 0円(0.0%)
リボミック 195円 -1円(-0.5%)
サンバイオ 1,101円 +3円(+0.3%)
ヘリオス 308円 +7円(+2.3%)
ブライトパス・バイオ 75円 -2円(-2.6%)
窪田製薬ホールディングス 144円 -1円(-0.7%)
ソレイジア・ファーマ 57円 0円(0.0%)
Delta−Fly Pharma 1,029円 +1円(+0.1%)
ステムリム 1,007円 -15円(-1.5%)
メディシノバ 307円 +3円(+1.0%)
ファンペップ 202円 -1円(-0.5%)
ペルセウスプロテオミクス 402円 -9円(-2.2%)
モダリス 404円 +4円(+1.0%)
クリングルファーマ 460円 -8円(-1.7%)
レナサイエンス 354円 -1円(-0.3%)

 6 バイオテックレポート(BR:Biotech Report)からのお願い

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