主要パイプラインの主要評価項目が未達となった窪田製薬とクリングルファーマの今後

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 1 創薬企業の相場概況

本日の創薬株はお盆期間の影響により、売買代金が100億円を下回り、低調な取引となりました。

また、前営業日に主要パイプラインに関する試験結果を発表した窪田製薬ホールディングス(窪田製薬)とクリングルファーマが注目を集めました。

窪田製薬は「エミクススタト塩酸塩」によるスターガルト病フェーズ3試験において、主要評価項目が未達であったことを報告しました(主要評価項目「黄斑萎縮の進行率」:エミクススタト群1.280mm2/年、プラセボ群1.309 mm2/年、p=0.8091)。

スターガルト病では有害物質の蓄積によって視力低下へと繋がるため、窪田製薬はエミクススタト塩酸塩の同有害物質の生成抑制作用による網膜保護と視力低下抑制を期待していました。

網膜での有害物質は、外から入ってくる光を(脳が認識出来るように)電気信号へと変換する際に発生しまが、エミクススタト塩酸塩はこの「光から電気信号へ」変換する働きを抑制することで有害物質の生成機会を減らし、蓄積量を減少させます。

そして、「光から電気信号へ」変換する働きを視覚サイクルと呼びますが、視覚サイクルの活性にはRPE65酵素(視細胞における光感受性物質を生成するために働く酵素)が必要不可欠であると窪田製薬は主張しており、エミクススタト塩酸塩にはRPE65酵素の発現抑制効果が認められています。




要するに、エミクススタト塩酸塩による視力低下抑制のメカニズムは、「RPE65酵素の発現抑制→視覚サイクルの抑制→有害物質の生成抑制→有害物質の蓄積抑制→視力低下の抑制」といった流れです。

しかしながら、加齢黄斑変性の他、スターガルト病においても同メカニズムでの治療効果が得られなかったことで、エミクススタトによる増殖糖尿病網膜症パイプラインの開発(現在フェーズ2完了)にも悪影響を与えると思われます。

そして、窪田製薬は同パイプラインの開発に関して、多額の研究開発資金が必要になることから、パートナー企業との共同開発を模索しているものの、上記より、その可能性は極めて低くなったと考えざるを得ない状況です。

そのため、窪田製薬のパイプラインを評価する上では、遠隔眼科医療用網膜モニタリング機器「PBOS」の超小型モバイルOCTと、ウェアラブル近視メガネのクボタメガネの2つがパイプライン価値の大部分を占めると評価されます。

▼遠隔眼科医療用網膜モニタリング機器「PBOS」の参考記事

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加えて、窪田製薬はMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権)を発行しました。

同ワラントの主目的は医療機器の研究開発・製造に関する資金調達であり、前記も踏まえると、窪田製薬の未来は医療機器製造メーカーへの転身にあるのかもしれません。

その場合、バイオテック企業特有の将来価値を大きく上乗せする評価算定ではなくなることが想定され、同算定方法の変化から、時価総額が大きく下落するリスクを念頭に置かなくてはなりません。

クリングルファーマはHGFタンパク質製剤「KP-100IT」によるALSフェーズ2試験において、主要評価項目であるALSFRS-Rスコアの変化量(24週時点)の有意差が得られなかったことを報告しました。

さらに、ALSFRS-Rスコアの30日あたりの変化量や、24週時のALSFRS-Rドメインごとのサブスコア(球機能、四肢機能、呼吸機能)、ALS患者のQOLを評価するALSAQ-40スコアなどの副次評価項目に関しても有意差が得られませんでした。

一方、KP-100IT投与群において進行抑制が認められた症例もあるため、クリングルファーマは今後の詳細な解析の実施と、同結果を踏まえた研究開発戦略の検討を行うとしています。




では、今回の試験を以て同パイプラインの開発が中止になる可能性が高いかというと、そうとも言い切れません。

というのも、ALS治療薬開発では被験者の罹病期間が非常に重要であり、罹病期間が20ヶ月を超えると統計学的な有意差が得られ難いという特徴があります。

その背景には、20ヶ月を境にし、治療薬に求められる主要作用が「神経保護」から「神経再生」へと移り変わるからです。

そして、同試験では選択基準を発症後30ヶ月以内としており、ALS試験としては非常に難易度の高いものでした。

故に、KP-100ITの神経再生作用に関しては疑問が生じる結果となったものの、同投与群において進行抑制が認められた症例があるということで、神経保護作用の期待はまだ持ち得ています。

今後の解析によって、同投与群における罹病期間20ヶ月以内の患者に進行抑制の傾向が見られた場合、選択基準を発病30ヶ月以内から20ヶ月以内(臨床試験では18ヶ月が一般的)へと短縮することで、ALSフェーズ3試験を実施する可能性があります。



 2 創薬企業のIR更新情報(前営業日)

【アンジェス】

2022年12月期 第2四半期決算説明会を開催しました。

【キャンバス】

営業外損益の計上に関するお知らせ

2022年6月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)

【キッズウェル・バイオ】

四半期報告書-第23期第1四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

【オンコリスバイオファーマ】

テロメライシン(OBP-301)の放射線併用食道がんPhase2臨床試験の承継に関するお知らせ

2022年12月期中間決算説明会の書き起こし記事が掲載されました。(2022年8月5日開催)

【ブライトパス・バイオ】

四半期報告書-第20期第1四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

2023年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

【窪田製薬ホールディングス】

第三者割当による第28回新株予約権(行使価額修正条項付)の発行及び第三者割当契約の締結に関するお知らせ

第2四半期 四半期報告書

第2四半期 決算短信〔IFRS〕(連結)

第25回新株予約権(行使価額修正条項付)の資金使途変更に関するお知らせ

スターガルト病治療薬候補「エミクススタト塩酸塩」の第3相臨床試験トップラインデータを発表

【ファンペップ】

2022年12月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

2022年12月期 第2四半期 四半期報告書

【ペルセウスプロテオミクス】

四半期報告書-第23期第1四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

2023年3月期第1四半期の事業の進捗及び業績について

2023年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

営業外収益及び特別損失の計上に関するお知らせ

【モダリス】

四半期報告書-第7期第2四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

【クリングルファーマ】

決算説明動画掲載のお知らせ

2022年9月期 3Q決算説明動画 決算概況編

2022年9月期 3Q決算説明動画 開発パイプラインの進捗状況編

2022年9月期 3Q決算説明動画 会社概要編

四半期報告書-第21期第3四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

2022年9月期業績予想の修正に関するお知らせ

2022年9月期第3四半期決算及び業績予想の修正等について

2022年9月期第3四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

ALSを対象とする第II相臨床試験(医師主導治験)に関するお知らせ(速報)

2022年9月期業績予想の修正に関するお知らせ

 3 創薬株価指数と主要株価指数

創薬株価指数 終値 前日比(%)
創薬平均株価 564円 -2円(-0.32%)
BR平均株価【大型株】 1,651円 -1円(-0.03%)
BR平均株価【低分子】 681円 -12円(-1.69%)
BR平均株価【低分子(大型株除く)】 324円 -10円(-2.90%)
BR平均株価【ペプチド・タンパク】 590円 +5円(+0.87%)
BR平均株価【ペプチド・タンパク(大型株除く)】 76円 0円(-0.43%)
BR平均株価【抗体・アプタマー】 216円 -2円(-1.01%)
BR平均株価【再生医療[細胞・増殖因子]】 759円 +2円(+0.28%)
BR平均株価【遺伝子】 334円 +4円(+1.09%)
主要株価指数 終値 前日比(%)
TOPIX33[医薬品] 3,354円 +109円(+3.34%)
NBI* 4,212ドル +50ドル(+1.19%)
日経平均株価 28,872円 +325円(+1.14%)
NASDAQ 13,047ドル +267ドル(+2.09%)

*NBI:NASDAQ Biotechnology Index

 4 創薬株価指数とテクニカル指標





創薬平均株価:ジーエヌアイグループ、アンジェス、オンコセラピー・サイエンス、そーせいグループ、ナノキャリア、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、ペプチドリーム、オンコリスバイオファーマ、リボミック、サンバイオ、ヘリオス、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、Delta−Fly Pharma、ステムリム、メディシノバ、ファンペップ、ペルセウスプロテオミクス、モダリス、クリングルファーマ、レナサイエンス

BR平均株価【大型株】:ジーエヌアイグループ、そーせいグループ、ペプチドリーム

BBR平均株価【低分子】:ジーエヌアイグループ、そーせいグループ、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、デルタフライファーマ、メディシノバ、レナサイエンス

BBR平均株価【低分子(大型株除く)】:カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、デルタフライファーマ、メディシノバ、レナサイエンス

BR平均株価【ペプチド・タンパク】:オンコセラピー・サイエンス、ペプチドリーム、ブライトパス・バイオ、ファンペップ

BR平均株価【ペプチド・タンパク(大型株除く)】:オンコセラピー・サイエンス、ブライトパス・バイオ、ファンペップ



BR平均株価【抗体・アプタマー】:カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、リボミック、ペルセウスプロテオミクス

BR平均株価【再生医療[細胞・増殖因子]】:サンバイオ、ヘリオス、ステムリム、クリングルファーマ

BR平均株価【遺伝子】:アンジェス、ナノキャリア、オンコリスバイオファーマ、モダリス

 4 創薬企業の相場のまとめ




全体
値上がり銘柄数 11銘柄
値下がり銘柄数 12銘柄
変わらず 5銘柄
出来高 1,458万株
売買代金 96億円
時価総額 8,415億円
個別銘柄 終値 前日比(%)
ジーエヌアイグループ 1,790円 -16円(-0.9%)
アンジェス 349円 +5円(+1.5%)
オンコセラピー・サイエンス 63円 0円(0.0%)
そーせいグループ 1,602円 -18円(-1.1%)
ナノキャリア 207円 +6円(+3.0%)
カルナバイオサイエンス 902円 +1円(+0.1%)
キャンバス 606円 +8円(+1.3%)
デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 208円 -4円(-1.9%)
ラクオリア創薬 829円 +8円(+1.0%)
シンバイオ製薬 821円 -7円(-0.8%)
カイオム・バイオサイエンス 166円 0円(0.0%)
キッズウェル・バイオ 232円 -7円(-2.9%)
ペプチドリーム 1,630円 +16円(+1.0%)
オンコリスバイオファーマ 520円 +4円(+0.8%)
リボミック 201円 -1円(-0.5%)
サンバイオ 1,145円 +18円(+1.6%)
ヘリオス 322円 -2円(-0.6%)
ブライトパス・バイオ 80円 -2円(-2.4%)
窪田製薬ホールディングス 199円 -80円(-28.7%)
ソレイジア・ファーマ 67円 0円(0.0%)
Delta−Fly Pharma 932円 +41円(+4.6%)
ステムリム 845円 0円(0.0%)
メディシノバ 326円 +4円(+1.2%)
ファンペップ 206円 +1円(+0.5%)
ペルセウスプロテオミクス 385円 0円(0.0%)
モダリス 447円 -10円(-2.2%)
クリングルファーマ 555円 -100円(-15.3%)
レナサイエンス 350円 -7円(-2.0%)

 6 バイオテックレポート(BR:Biotech Report)からのお願い

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