そーせい(2021年7月号|ガイドブック)


1.現状

そーせいグループ(以下、「そーせい」と言う)は既に3つの上市製品を保有しており、毎年25億円前後のロイヤリティ収入を同製品群の導出先であるNovartis社および富士フイルム社から得ています。

しかし、バイオテック企業としてのそーせいの魅力は年間25億円前後の安定した収益ではなく、SBDD(構造ベース創薬)*の実現に大きく関与しているStaR技術を柱とする創薬プラットフォームです。

そーせい独自の同プラットフォームの活用によって、明瞭な創薬研究が行えるようになり、新規医薬品化合物の効率的な創出が可能になります。

そーせいの経営戦略は専ら同プラットフォームの使用権の付与、または、そーせいが同プラットフォームを用いた創薬研究のサポートを行うなど、技術提供によるパートナーシップ契約が基本路線となっています。

同契約によって得られる収益は一般的なバイオテック企業における医薬品化合物の導出契約と同じであり、契約一時金、マイルストーン、ロイヤリティの大きく3つに区分されるものの、そーせいのそれは技術の導出契約によってもたらされるため、非常にユニークな戦略といえます。

また、そーせいの同プラットフォームの中身はGPCR(Gタンパク質共役受容体)の構造解析が主要であり、パートナーシップ契約ではパートナーがターゲットとして選択するGPCRに対する独占的な技術提供が基本です。

例えば、そーせいとパートナーシップ契約を2015年に結んだファイザー社や、2019年に結んだジェネンテック社や武田薬品工業社が選択するGPCRは異なります。

創薬のターゲットとするGPCRの種類は約400と十分に数があることから、前述したそーせいの経営戦略は今後も続くと予想されます。

*SBDD:標的タンパク質の立体構造情報に基づいた分子設計手法であり、化合物が結合するタンパク質のポケットの形状に基づき医薬品化合物を設計する。

 

2.主要な創薬技術

・StaR(Stabilised Receptor)技術

医薬品の開発にはLBDD(リガンド*ベース創薬)とSBDD(構造ベース創薬)の2つが主流です。

従来型のLBDDでは細胞の表面に存在する受容体などの標的タンパク質ではなく、化合物(リガンド)の性質に注目し改良することを軸としていますが、SBDDでは標的タンパク質の構造を解析することを軸としています。

言うなれば、LBDDはリガンドの化学式を創薬の出発点とするのに対し、SBDDでは標的タンパク質の立体構造を創薬の出発点とします。

そして、そーせいの医薬品開発は後者のSBDDによって行っています。

代表的な標的タンパク質は、リガンド依存性イオンチャネル型受容体**、酵素活性膜貫通型受容体***、Gタンパク質共役型受容体、脂溶性リガンド細胞質内受容体****の4種類であり、StaR技術はこの内、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)をターゲットとしています。

GPCRは細胞外にリガンドの結合部、細胞内にGタンパク質*****との結合部を持っており、リガンドがGPCRと結合することでGタンパク質が活性化され、細胞内での情報伝達が開始されます。

また、GPCRは非常に複雑な構造をしており、一本の紐(タンパク質)が捻れたり曲がったりしながら細胞を3.5往復(7回貫通)することで形状を保っており、その性質から、GPCRは7回膜​貫通型受容体とも呼ばれます。

GPCRに限らず、受容体の立体構造を詳細に解析するためには細胞から受容体を抽出することが必要です。

しかし、GPCRは前述した通り、一本の紐(タンパク質)が捻れたり曲がったりしながら細胞を7回も貫通しているため、本来の形状のまま細胞から抽出することは非常に困難です。

そのため、GPCRの抽出においては形状の保持に視点が集まり、そーせいは解決策としてGPCRの細胞外にある特定の箇所に対して小さな遺伝子変異を引き起こすことで、GPCRの形状保持を実現しました。

そして、そーせいはGPCRの立体構造解析の肝となる形状保持に関する一連の技術をStaR技術と名付けており、StaR技術によって抽出されたGPCRをStaRタンパク質と呼んでいます。

*リガンド:細胞の表面に存在する特定の受容体に結合する物質。

**リガンド依存性イオンチャネル型受容体:細胞内外のイオンを通過させる受容体。

***酵素活性膜貫通型受容体:細胞内の酵素を活性化させる受容体。

****脂溶性リガンド細胞質内受容体:細胞外の受容体を介さずに細胞膜を通過した脂溶性リガンドと結合する、細胞質内に存在する受容体。

*****Gタンパク質:細胞増殖・分化の制御など非常に多くの様々なことに関与している。

******点変異:塩基が別の塩基に変ったり、或いは失われたりするような小さな変化。

 

3.主要な開発パイプライン

・特になし

多くのバイオテック企業ではその企業を語る上で欠かせない主力パイプラインが存在しますが、現在のそーせいにはそれがありません。

そーせいはこれまでアルツハイマー病やレビー小体型認知症、その他の認知症患者の認知障害に対する治療薬としてM1(ムスカリンM1受容体作動薬)を主力パイプラインとしていましたが、2018年9月にM1の有毒性(対象:サル)が検出されたことを発表し、同理由によりM1の開発を中断することを決定しました。

また、アストラゼネカ社に導出し、そーせいの自社・導出パイプラインの中で最も進捗の良いAZD4635(アデノシンA2a受容体拮抗薬)についても状況は良くありません。

AZD4635は前立腺がんを対象としたカクテル療法を構成する1つとして取り入れられ、2つのフェーズ2治験で5つのカクテル療法の有効性を探っていました(「治験1:AZD4635+デュルバルマブ、AZD4635+オレクルマブ、AZD4635とデュルバルマブとオレクルマブ」「治験2:AZD4635+デュルバルマブ、AZD4635+デュルバルマブ+カバジタキセル」)。

しかしながら、アストラゼネカ社1つのカクテル療法(AZD4635+デュルバルマブ+カバジタキセル)を除き、それ以外の4つの療法の開発を安全性または有効性を理由に中止しました。

世界市場規模が約100億ドル(2019年)と推定されている前立腺がん治療薬の開発候補はまだ1つ残っているものの、苦戦を強いられていることから、主力パイプラインと呼ぶには相応しくないと考えています。

 

4.財務上の注意点

・特になし

そーせいの2029年12月31日時点での現金及び預金は約400億円であり、導出先による上市品である慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬と口腔咽頭カンジダ治療薬の販売ロイヤリティによって年間25億円前後の安定した収益も計上しています。

さらに、みずほ銀行主導で2015年9月28日と2017年5月18日に締結した総額150億円(1回目:100億円、2回目:50億円)のシンジケートローン*も完済し、なおかつ、そーせいに有利な50億円のコミットメント付タームローン**を締結していることから、財務リスクは皆無と言えます。

*シンジケートローン:シンジケートとは引受団という意味であり、アレンジャーと呼ばれる主幹事が複数の金融機関を招聘し組成されたもの。その組成された引受団からによる貸付のことをシンジケートローンと言う。

**タームローン:借入金、金利、期間、返済条件などを規定した期間が中長期となる貸付のこと。一般的に金融機関からの貸付は契約時に一括実行されるが、契約時から一定期間の間に分割で貸付を行う契約内容もある。そういった分割貸付のタームローンをコミットメント付タームローンと言う。

 

5.財務諸表

年度2020年12月期2019年12月期2018年12月期
損益計算書【連結】
 売上高8,8429,7262,872
 営業利益928384-5,734
 経常利益1,622534-7,243
 当期利益1,4791,432-5,977
貸借対照表【連結】
 総資産76,465 56,68058,987
 自己資本52,38145,07541,577
 資本金40,22037,47936,854
 有利子負債14,7891,8796,964
キャッシュ・フロー計算書【連結】
 営業活動によるキャッシュ・フロー4,6723,441-3,995
 投資活動によるキャッシュ・フロー-150-246-2,808
 財務活動によるキャッシュ・フロー20,278-6,964-2,268
 キャッシュ・フロー合計24,800-3,769-9,071
経営指標【連結】
 自己資本比率68.5%79.5%70.5%
 ROA(総資産利益率)2.2%2.5%-
 ROE(自己資本利益率)3.0%3.3%-
 総資産経常利益率2.4%0.9%-
単位:百万円(%箇所を除く)

 

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