そーせい|癌に対する抗PD-1/PD-L1抗体の弱点とEP4拮抗薬「HTL0039732」の適応患者数と売上高の推定(前立腺癌・頭頸部癌編)


本記事に至るまで、EP4拮抗薬の効能メカニズムや「HTL0039732」の導出先候補に関する内容、および、本記事と同一シリーズである内容で、HTL0039732の大腸癌・胃癌を適応とする売上高の推定や患者数に関して記事を作成しております。

つきましては、EP4拮抗薬「HTL0039732」のより良い理解のため、本記事閲読の前に以下の記事も目を通して頂けると幸いです。

▼EP4拮抗薬の効能メカニズムと「HTL0039732」の導出先候補に関する記事

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▼EP4拮抗薬「HTL0039732」の大腸癌・胃癌の適応患者数と売上高に関する記事

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上記関連記事でも言及したとおり、EP4拮抗薬「HTL0039732」による適応症は多岐に渡り、マイクロサテライト安定性(MSS)大腸癌、胃食道癌、頭頸部癌、去勢抵抗性前立腺癌では、抗PD-1/PD-L1抗体による免疫療法の効果が限定的であることから、初期の段階では同適応症に狙いを絞って開発が進められると予想されます。

前立腺癌治療薬では、2019年7月に米国で承認されたBayer社の非転移性去勢抵抗性前立腺癌治療薬「Nubeqa」が、2021年度に2.2億ドルの売上を計上しています。

Nubeqaは前記した非転移性去勢抵抗性前立腺癌の適応に始まり、転移性ホルモン感受性癌に対しても適応を得ました。

また、Nubeqaは併用投与によって標準治療にも組み入れられるなど、適応症や投与法を順調に拡大させています。

このような流れによって、Bayer社はNubeqaを前立腺癌に対する全領域への適応を拡大することで、ピーク時の売上高34億ドルまで引き上げることが可能とコメントを残しています。




加えて、製薬・バイオテクノロジー業界の分析に長けたEvaluate社によると、Nubeqaは2026年度までにブロックバスターに成長すると予想しています。

そーせいのHTL0039732も免疫反応を総合的に高める作用が期待されることから、Nubeqaと同様の道を歩むことが可能だと思われます。

新規患者数が年間140万人以上と推定され、前立腺癌を適応とするHTL0039732の目指すべき売上高は、Nubeqaと同じく30億ドル以上でしょう。

頭頸部癌に関しては、HTL0039732は再発または転移性の一次治療薬として用いられる可能性があります。

現在、同一次治療でMSD社の抗PD-L1抗体「Keytruda」が用いられており、PD-L1発現が強陽性と捉えられるCPS(全腫瘍細胞数中のPD-L1陽性腫瘍細胞とPD-L1陽性免疫細胞の割合)が20以上の同患者に対して高い効果を示しています。

一方、約6割を占めるCPS20未満の同患者に対しての有効性は乏しく、同6割に該当する患者に対する治療薬の開発が課題です。

そして、HTL003973はその6割が選択可能な治療薬になり得る可能性があり、同疾患の一次治療としてKeytrudaと対をなす製品として期待が集まります。




頭頸部癌は大腸癌や前立腺癌に比べて患者数が少なく、再発・転移性頭頸部癌の新規患者数は年間36万人程度です(世界の新規癌患者数1,800万、頭頸部癌率5%、再発・転移率40%として算出)。

このうちの約6割の21.6万人がHTL003973の適応になると見込まれるものの、それはマイクロサテライト安定性大腸癌患者数の15%程度(世界の新規癌患者数1,800万、大腸癌率10%、マイクロサテライト安定性80%として算出)です。

前途では単一製品によるマイクロサテライト安定性大腸癌患を適応とする市場規模は20億ドル以上と申し上げましたが、売上高ベースでHTL003973の頭頸部癌を適応とする売上高を推定すると3億ドル以上が見込めます。

なお、治療費ベースで推定した場合では、米国での頭頸部癌のHTL003973の適応患者は(推定)2.2万にとされ、Keytrudaによる年間治療費15万ドルを当て込むと米国での最大売上規模は33億ドルと導き出されます。

以上を踏まえると、HTL0039732の4つの適応症(MSS大腸癌、胃食道癌、頭頸部癌、去勢抵抗性前立腺癌)による売上高は100億ドルに到達する可能性があり、それはまさに、M4/M1受容体作動薬に続き、巨額のライセンス契約が見込める主力製品と言えるのではないでしょうか。

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