1 創薬企業の相場概況
日米の医薬品株が低調な中、創薬株では値上がりが1銘柄のみと全体的に売り込まれ大幅に値を下げました。
唯一値を上げた銘柄はデ・ウエスタン・セラピテクス研究所(DWTI)であり、前日に眼科領域における再生医療用細胞製品「DWR-2206」の開発に着手する旨を報告したことが材料視された模様です。
しかし、今回発表したDWR-2206はiPS細胞やES細胞などの幹細胞による分化誘導型の製品ではなく、ドナーから採取した角膜内皮細胞を人工的に培養・増殖させた製品です。

(出典:デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 新規パイプライン(再生医療用細胞製品)の共同開発契約に関する説明資料)
DWR-2206による開発は水疱性角膜症を適応とし、日本における水疱性角膜症の患者数は約1万人と推定されています。
DWR-2206はその性質上、再生医療等製品の条件及び期限付承認制度を活用することが想定され、患者数の少なさを考慮すると、同制度による申請までの被験者総数は100人以下になると見込まれ、条件付きとはいえ上市までの期間は大幅に短縮されるでしょう。
オンコセラピー・サイエンスとリボミックはナノキャリアに続き、財務会計基準機構から退会した旨を報告しました。
日本証券取引所によると、上場企業の96%が同機構に加入しているとされています。
同機構は企業会計の開発を主な目的としており、正直なところ、創薬企業にとって加入するメリットはなく、創薬企業に28社において、内5社(オンコセラピー・サイエンス、ナノキャリア、リボミック、ブライトパス・バイオ、ステムリム)が同機構に加入していません。
ムダの削減に取り組む姿勢は投資家へ良い印象を与えますが、本日の両者の株価推移は対象的であり、オンコセラピー・サイエンスは相場環境が悪い中、前日と同じ株価で取引を終えた一方、リボミックは最も下落したモダリスに次ぐ下落率となりました。
大幅な下落となったリボミックですが、前記機構からの退会のほか、増殖因子であるTGF-β1に対するアプタマー「APT-β1」を開発し、肺癌細胞を用いた固形癌モデルマウスにおいて抗癌剤「ゲフィチニブ」の治療効果の延長を実証した旨も報告しています。

(出典:Anti-TGF-β1 aptamer enhances therapeutic effect of tyrosine kinase inhibitor, gefitinib, on non-small cell lung cancer in xenograft model)
現在の癌治療は併用療法が主流であり、様々な作用を実現するために多くの企業が開発を続けています。
今回のリボミックのように、ペプチドリームも増殖因子(肝細胞増殖因子:HGF)をターゲットとする開発をGenentech社と共同で行っており、増殖因子阻害による癌増殖抑制効果を狙った開発は注目度の高いものです。
アプタマーは選択性が高く、相対的に安全性を担保しやすい特徴があるため、本件はもう少々評価されても良いのではと思います。
メディシノバは6月末までとされていたBARDAとの塩素ガス曝露による肺障害に対する共同開発契約の期間を延長したことを報告しました。
延長の理由は既存の評価項目の他、新規剤形(MN-166の静脈注射剤)による薬物動態試験などが新たに加わったからであり、有効性を示すための統計学上の都合での延長ではない点に注意が必要です。
同社CMOの松田和子氏が「化学ガス曝露による肺障害の治療という新たな領域での研究開発において得られたヒツジモデルの研究成果が心強いものであった」と言及するように、MN-166の治療効果が認められたため、錠剤と注射剤の両方での申請を行う予定だと考えられます。
肺障害患者は呼吸や嚥下が行えない場合もあり、そこをカバーするためにも注射剤の需要は非常に高いです。
メディシノバの同発表から株価は下落していますが、前向きな契約延長と捉えて宜しいと思います。
2 創薬企業のIR更新情報(前営業日)
【オンコセラピー・サイエンス】
・公益財団法人財務会計基準機構への加入状況及び加入に関する考え方等に関するお知らせ
【デ・ウエスタン・セラピテクス研究所】
・新規パイプライン(再生医療用細胞製品)の共同開発契約に関する説明資料
・角膜内皮障害を対象とした再生医療用細胞製品の共同開発契約の締結及び資本提携並びに資金借入に関するお知らせ
・第三者割当による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第11回新株予約権の募集に関するお知らせ
【キッズウェル・バイオ】
・第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債並びに新株予約権の月間行使状況に関するお知らせ
【ペプチドリーム】
・当社関連会社ペプチグロース株式会社によるBMP4,7阻害ペプチド(Noggin-likeペプチド)の販売開始について
【リボミック】
・公益財団法人財務会計基準機構への加入状況及び加入に関する考え方等に関するお知らせ
・形質転換増殖因子TGF-β1アプタマー併用による抗がん剤の作用延長
【ヘリオス】
【ブライトパス・バイオ】
【ソレイジア・ファーマ】
・Sancuso及びepisilの中国3都市販売権サブライセンス契約締結及び当社中国子会社販売体制解消のお知らせ
【メディシノバ】
・MN-166(イブジラスト)の塩素ガス曝露による肺障害に対する米国生物医学先端研究開発機構(BARDA)との共同開発契約の期間延長に関するお知らせ
【ペルセウスプロテオミクス】
【レナサイエンス】
・内部統制報告書-第23期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
・有価証券報告書-第23期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
3 創薬株価指数と主要株価指数
創薬株価指数 | 終値 | 前日比(%) |
---|---|---|
創薬平均株価 | 485円 | -12円(-2.55%) |
BR創薬株3種 | 1,267円 | -34円(-2.63%) |
BR創薬株7種 | 851円 | -22円(-2.49%) |
BR中型株指数 | 513円 | -12円(-2.22%) |
BR小型株指数 | 237円 | -6円(-2.46%) |
主要株価指数 | 終値 | 前日比(%) |
---|---|---|
TOPIX33[医薬品] | 3,141円 | -46円(-1.46%) |
NBI* | 3,749ドル | -30ドル(-0.79%) |
日経平均株価 | 25,936円 | -457円(-1.73%) |
NASDAQ | 11,029ドル | -149ドル(-1.33%) |
*NBI:NASDAQ Biotechnology Index
4 創薬株価指数とテクニカル指標
創薬平均株価構成銘柄:ジーエヌアイグループ、アンジェス、オンコセラピー・サイエンス、そーせいグループ、ナノキャリア、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、ペプチドリーム、オンコリスバイオファーマ、リボミック、サンバイオ、ヘリオス、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、Delta−Fly Pharma、ステムリム、メディシノバ、ファンペップ、ペルセウスプロテオミクス、モダリス、クリングルファーマ、レナサイエンス
BR創薬株3種構成銘柄:ジーエヌアイグループ、そーせいグループ、ペプチドリーム
BR創薬株7種構成銘柄:ジーエヌアイグループ、アンジェス、そーせいグループ、ペプチドリーム、サンバイオ、ヘリオス、ステムリム
BR中型株指数構成銘柄:アンジェス、サンバイオ、ヘリオス、ステムリム
BR小型株指数構成銘柄:オンコセラピー・サイエンス、ナノキャリア、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、オンコリスバイオファーマ、リボミック、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、Delta−Fly Pharma、メディシノバ、ファンペップ、ペルセウスプロテオミクス、モダリス、クリングルファーマ、レナサイエンス
4 創薬企業の相場のまとめ
全体 | |
---|---|
値上がり銘柄数 | 1銘柄 |
値下がり銘柄数 | 25銘柄 |
変わらず | 2銘柄 |
出来高 | 2,278万株 |
売買代金 | 972,097万円 |
時価総額 | 6,945億円 |
個別銘柄 | 終値 | 前日比(%) |
---|---|---|
ジーエヌアイグループ | 1,232円 | -30円(-2.4%) |
アンジェス | 330円 | -7円(-2.1%) |
オンコセラピー・サイエンス | 64円 | 0円(0.0%) |
そーせいグループ | 1,120円 | -10円(-0.9%) |
ナノキャリア | 277円 | -6円(-2.1%) |
カルナバイオサイエンス | 877円 | -23円(-2.6%) |
キャンバス | 618円 | -31円(-4.8%) |
デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 | 208円 | +6円(+3.0%) |
ラクオリア創薬 | 701円 | -4円(-0.6%) |
シンバイオ製薬 | 691円 | -21円(-2.9%) |
カイオム・バイオサイエンス | 170円 | -3円(-1.7%) |
キッズウェル・バイオ | 263円 | -9円(-3.3%) |
ペプチドリーム | 1,371円 | -51円(-3.6%) |
オンコリスバイオファーマ | 506円 | -13円(-2.5%) |
リボミック | 201円 | -11円(-5.2%) |
サンバイオ | 1,032円 | -27円(-2.5%) |
ヘリオス | 342円 | -14円(-3.9%) |
ブライトパス・バイオ | 85円 | -3円(-3.4%) |
窪田製薬ホールディングス | 213円 | -7円(-3.2%) |
ソレイジア・ファーマ | 82円 | -3円(-3.5%) |
Delta−Fly Pharma | 1,048円 | 0円(0.0%) |
ステムリム | 694円 | -8円(-1.1%) |
メディシノバ | 332円 | -8円(-2.4%) |
ファンペップ | 204円 | -3円(-1.4%) |
ペルセウスプロテオミクス | 379円 | -6円(-1.6%) |
モダリス | 474円 | -32円(-6.3%) |
クリングルファーマ | 616円 | -13円(-2.1%) |
レナサイエンス | 350円 | -4円(-1.1%) |
6 バイオテックレポート(BR:Biotech Report)からのお願い
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