リボミックとブライトパス・バイオが事業計画と成長可能性を公表 オンコセラピー・サイエンスは研究者の朴氏から営業マンの嶋田氏へ社長が交代

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 1 創薬企業の相場概況

日米の主要指数である日経平均株価とNASDAQが低調な中、日米の医薬品株価指数は前日比高で取引を終えました。

しかし、創薬株は主要指数に引きずられる格好となった結果、値下がり数が22銘柄に上り、前日比1.6%安で取引を終えました。

個別銘柄ではリボミックとブライトパス・バイオが事業計画と成長可能性の資料を公表しました。

両者とも時価総額が100億円以下と小さく、また、開発状況が早期パイプラインのみであるなど、いくつかの類似点がありますが、リボミックは事業資金を潤沢に抱えている一方、ブライトパス・バイオはMSワラントの行使が思うように進まず、倒産リスクが高まっており、ファイナンスの面で大きく異なります。

そして、リボミックは工業的な生産が可能な抗体医薬品とも言えるRNAアプタマー(アプタマー)を創薬の柱にしている企業です。




中分子化合物のアプタマーは高分子化合物の抗体に比べて、品質管理やコスト面での優位性を備えています。

また、分子量の大きさのため、抗体では治療作用を発動させることが困難なターゲットも存在し、抗体が効かないターゲットに対して中分子のアプタマーが力を発揮するケースも想定されています。

しかし、次世代の抗体医療と期待されるRNAアプタマーを用いるリボミックですが、その開発は思うように進まず、現在はアプタマーによる新たな創薬プラットフォーム「RaptGen」への期待が高まっている状況です。

資金を十分に備え、ビジネス資産も手に入ったリボミックの今後は、GPCR創薬プラットフォームを持つそーせいグループや、ペプチド創薬プラットフォームを持つペプチドリームのように、RaptGenのライセンスを交えた創薬契約を軸に事業を進展させる可能性が高まります。

一方、資金難に苦しむブライトパス・バイオはリボミックのように長期的な視点でビジネスを考える余裕がありません。

ブライトパス・バイオの癌を適応とするパイプラインポートフォリオは下図の通り、がん免疫サイクルを網羅的にカバーしています(癌ペプチドワクチン「GRN-1201」は実質的に開発失敗)。

がん免疫サイクルに対するブライトパス・バイオのパイプライン
(出典:ブライトパス・バイオ 事業計画及び成長可能性に関する事項)




しかし、それらの開発を自社で進める資金が不足しており、今後数年は同パイプラインの導出交渉が事業の中心になると思われます。

これら複数のパイプラインの中でも、創薬トレンドに沿った2つのパイプライン(BP1209/BP2301)が主力になるでしょう。

ペプチドと抗体による薬物複合体のネオアンチゲン・ワクチンである「BP1209」は、免疫発動が困難であったGRN-1201やオンコセラピー・サイエンスが開発失敗したペプチドワクチンとは異なり、免疫発動は抗体によって行います。

その上で抗原認識をペプチドによって行うため、従来の癌ペプチドワクチンに比べて高い効果を示せると期待されています。

CAR-T細胞である「BP2301」は、ウイルスベクターを用いない遺伝子導入によってCAR-T細胞の長期生存を実現し、固形癌で高発現するHER2を標的抗原と認識させる機能を持たせました。

一般的なCAR-T細胞の生成ではウイルスベクターによる遺伝子導入が行われますが、その方法ではCAR-T細胞の生存期間が短くなるというデメリットがあり、CAR-T細胞の長期生存が求められる固形癌の治療では適応が難しい状況です。





結局のところ、癌治療薬開発の中心はT細胞であるため、CAR-T細胞の研究開発は今後も世界中で行われると想定されます。

そのため、BP2301の注目度は高いと考えられ、導出に際して良い製品となり得ます。

オンコセラピー・サイエンスは度重なる癌ペプチドワクチンの開発失敗などを踏まえ、ついに代表取締役社長の交代に至りました。

また、新たな社長となる嶋田氏が癌プレシジョン医療関連事業を担う子会社のCancer Precision Medicine社の代表取締役社長であり、同社が7億5千万円の売上高を前期に計上するなど、目立った成果を上げたことが嶋田氏の抜擢に繋がったと思われます。

嶋田氏は前社長の朴氏に比べ、営業力に強みがある人物です。

そして、上記実績も踏まえると、癌プレシジョン医療関連事業が創薬事業の上に立つ構造となると予想され、ハイリスク・ハイリターンの創薬企業というよりは、ローリスク・ローリターンの一般サービス企業へと変貌するかもしれません。

その場合、100億円を超える時価総額が果たして適正なのか、疑問が残ります。



 2 創薬企業のIR更新情報(前営業日)

【オンコセラピー・サイエンス】

代表取締役の異動に関するお知らせ

【リボミック】

2022年3月期 有価証券報告書

事業計画及び成長可能性に関する事項

【ブライトパス・バイオ】

事業計画及び成長可能性に関する事項

【クリングルファーマ】

2022年9月期(第21期)中間期 クリングルファーマ株式会社 株主通信

【レナサイエンス】

2022年定時株主総会決議通知

 3 創薬株価指数と主要株価指数

創薬株価指数 終値 前日比(%)
創薬平均株価 497円 -8円(-1.59%)
BR創薬株3種 1,301円 -16円(-1.23%)
BR創薬株7種 873円 -13円(-1.50%)
BR中型株指数 525円 -11円(-2.03%)
BR小型株指数 243円 -4円(-1.73%)
主要株価指数 終値 前日比(%)
TOPIX33[医薬品] 3,187円 +1円(+0.03%)
NBI* 3,779ドル +28ドル(+0.75%)
日経平均株価 26,393円 -412円(-1.54%)
NASDAQ 11,178ドル -4ドル(-0.03%)

*NBI:NASDAQ Biotechnology Index

 4 創薬株価指数とテクニカル指標

創薬平均株価構成銘柄:ジーエヌアイグループ、アンジェス、オンコセラピー・サイエンス、そーせいグループ、ナノキャリア、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、ペプチドリーム、オンコリスバイオファーマ、リボミック、サンバイオ、ヘリオス、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、Delta−Fly Pharma、ステムリム、メディシノバ、ファンペップ、ペルセウスプロテオミクス、モダリス、クリングルファーマ、レナサイエンス

BR創薬株3種構成銘柄:ジーエヌアイグループ、そーせいグループ、ペプチドリーム

BR創薬株7種構成銘柄:ジーエヌアイグループ、アンジェス、そーせいグループ、ペプチドリーム、サンバイオ、ヘリオス、ステムリム

BR中型株指数構成銘柄:アンジェス、サンバイオ、ヘリオス、ステムリム

BR小型株指数構成銘柄:オンコセラピー・サイエンス、ナノキャリア、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、オンコリスバイオファーマ、リボミック、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、Delta−Fly Pharma、メディシノバ、ファンペップ、ペルセウスプロテオミクス、モダリス、クリングルファーマ、レナサイエンス

 4 創薬企業の相場のまとめ




全体
値上がり銘柄数 4銘柄
値下がり銘柄数 22銘柄
変わらず 2銘柄
出来高 2,834万株
売買代金 1,099,984万円
時価総額 7,122億円
個別銘柄 終値 前日比(%)
ジーエヌアイグループ 1,262円 -46円(-3.5%)
アンジェス 337円 -6円(-1.7%)
オンコセラピー・サイエンス 64円 0円(0.0%)
そーせいグループ 1,130円 -7円(-0.6%)
ナノキャリア 283円 +1円(+0.4%)
カルナバイオサイエンス 900円 -29円(-3.1%)
キャンバス 649円 -14円(-2.1%)
デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 202円 -3円(-1.5%)
ラクオリア創薬 705円 -6円(-0.8%)
シンバイオ製薬 712円 -13円(-1.8%)
カイオム・バイオサイエンス 173円 -3円(-1.7%)
キッズウェル・バイオ 272円 +1円(+0.4%)
ペプチドリーム 1,422円 -11円(-0.8%)
オンコリスバイオファーマ 519円 -11円(-2.1%)
リボミック 212円 +9円(+4.4%)
サンバイオ 1,059円 -40円(-3.6%)
ヘリオス 356円 -11円(-3.0%)
ブライトパス・バイオ 88円 -1円(-1.1%)
窪田製薬ホールディングス 220円 -7円(-3.1%)
ソレイジア・ファーマ 85円 -1円(-1.2%)
Delta−Fly Pharma 1,048円 -26円(-2.4%)
ステムリム 702円 +2円(+0.3%)
メディシノバ 340円 -12円(-3.4%)
ファンペップ 207円 0円(0.0%)
ペルセウスプロテオミクス 385円 -19円(-4.7%)
モダリス 506円 -29円(-5.4%)
クリングルファーマ 629円 -7円(-1.1%)
レナサイエンス 354円 -11円(-3.0%)

 6 バイオテックレポート(BR:Biotech Report)からのお願い

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