窪田製薬|最大400億円の売上高が見込めるエミクススタト塩酸塩によるスターガルト病フェーズ3試験の注目点


窪田製薬ホールディングスは「エミクススタト塩酸塩」によるスターガルト病フェーズ3試験に関して、最終被験者の最終来院が完了したことを2022年6月24日に報告しました。

スターガルト病は遺伝性の進行性の視力障害疾患であり、網膜の新陳代謝を司る遺伝子ABCA4の異常によって、網膜に溜まった有害物質を代謝出来ずにいることが原因と考えられています。

スターガルト病
(参照:窪田製薬ホールディングス 2021年12月期通期決算説明資料兼事業計画及び成長可能性資料)

スターガルト病では有害物質の蓄積によって視力低下へと繋がるため、窪田製薬ホールディングスはエミクススタト塩酸塩の同有害物質の生成抑制作用による網膜保護と視力低下抑制を期待しています。

網膜での有害物質は、外から入ってくる光を(脳が認識出来るように)電気信号へと変換する際に発生しまが、エミクススタト塩酸塩はこの「光から電気信号へ」変換する働きを抑制することで有害物質の生成機会を減らし、蓄積量を減少させます。

そして、「光から電気信号へ」変換する働きを視覚サイクルと呼びますが、視覚サイクルの活性にはRPE65酵素(視細胞における光感受性物質を生成するために働く酵素)が必要不可欠であると窪田製薬は主張しており、エミクススタト塩酸塩にはRPE65酵素の発現抑制効果が認められています。

要するに、エミクススタト塩酸塩による視力低下抑制のメカニズムは、「RPE65酵素の発現抑制→視覚サイクルの抑制→有害物質の生成抑制→有害物質の蓄積抑制→視力低下の抑制」といった流れです。

しかし、有効性が認められなかった加齢黄斑変性治療薬フェーズ2b/3試験(エンロール数:508人、投与期間:24ヶ月)においても、同メカニズムによる網膜保護を目的としていたため、スターガルト病に対しての有効性の確度は低めです。

同試験の焦点となるのは、網膜ダメージの原因が視覚サイクルによって発現した有害物質によるものかどうかであり、仮に視覚サイクルによる有害物質が同疾患に対して大きく関与していない場合は極めて厳しい結果になると思われます。

なお、米国でのスターガルト病患者数は3〜4万人と推定され、患者数は非常に少ないものの、継続的な治療が必須な疾患であることから、最大で年間240~320百万ドルの売上高を見込めます(加齢黄斑変性治療薬「アイリーア」の1回あたりの費用約1,000ドルと、年間あたりの投与回数を8回と仮定して算出)。

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