GNIは中国でのIPF治療薬に対する懸念後退で大幅上昇 シンバイオは増資のデメリットよりも開発成功感度の向上に注目すべき ペルセウスプロテオミクスは開発失速により正念場を迎える

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 1 創薬企業の相場概況

昨日の米国株式相場はNASDAQが下落となったものの、NASDAQ Biotechnology Index(NBI)は上昇に転じました。

そして、本日のTOPIX33業種別-医薬品も上昇したことから、医薬品業種の相場環境は良かったと思われますが、それに反し、創薬株は下落しました。

創薬株全体の下落数も14と半数を占め、創薬株は苦戦を強いられました。

個別ではジーエヌアイグループに対し、Covid-19パンデミックによる中国国内での人の流れが抑制されていることにより、中国におけるIPF治療薬「「アイスーリュイ」の売上高に懸念が生じていました。

しかしながら、前日に発表された第1四半期決算においてその懸念を払拭することに成功し、結果として本日は5%を超える株価上昇となりました。

シンバイオ製薬は1百万株の新規株式発行と、2百万株分のストックオプションの発行の影響で6.2%安となりました。

日本創薬企業全体として既存株主が不利益を被るMSワラントが資金調達方法として選択される傾向がありますが、シンバイオはトレアキシン点滴静注液を主な理由に昨年は80億円以上の売上高を計上しており、MSワラントをあえて選択する必要がない点が同社の資金調達に関する強みです。

(トレアキシンのリスクに関しての詳細は「シンバイオ製薬|トレアキシン点滴静注液(RTD製剤)のジェネリック医薬品製造会社による特許侵害に関わる注目点」をご参考下さい)。

なお、資金調達で得た資本は抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの開発に充当する予定であり、同剤は米国において天然痘を適応とする医学的防衛策(MCM)製品として承認を得ており、同剤への資金投入は開発成功感度の向上へ繋がると考えられます。

そのため、株式の流通量増加に伴う一株あたりの価値喪失の度合いよりも、開発成功感度の向上による投資リスク低下の度合いの方が大きく、今回のシンバイオによる資金調達は前向きに捉えるべきではないでしょうか。

ペルセウスプロテオミクスはほぼ同じ内容の2022年3月期決算説明会資料と事業計画及び成長可能性に関する資料を公開しました。

成長可能性に関する資料はグロース市場へ上場している企業が開示義務を負うものですが、開示内容と開示するタイミングに投資家は首を傾げたと思われます。

そして、同内容は非常に危機感を覚えるものでした。

ペルセウスプロテオミクスは4製品「PPMX-T001~T004」で8つのパイプラインの開発を進めており、内3製品5パイプラインが導出済みでした。

パイプラインの進捗(出典:ペルセウスプロテオミクス 事業計画及び成長可能性に関する資料)

しかし、最も開発が進んでいたパイプラインであるPPMX-T001のフェーズ2試験で有効性を示せず、現在進行中のPPMX-T001の残りの3パイプラインについても、同剤の特許が2022年6月で失効することから、導出先の中外製薬からのマイルストーンが得られない可能性が非常に高いです。

それに加えて、同特許失効後は中外製薬との契約も切れることや、(特許取得時期からも分かるように)PPMX-T001は古い抗体作成技術で作られたもののため、今後の開発は進められないと予想されます。

また、富士フィルムに導出していた放射性同位体標識抗体のPPMX-T002とPPMX-T004は、2022年3月に同社が放射性医薬品事業をペプチドリームに譲渡したことに伴い、ライセンスがペルセウスプロテオミクスに返還されました。

返還の理由は明らかにされていませんが、放射性医薬品事業を成長の軸に据えるペプチドリームからの返還は、両剤の力不足と捉えるに十分な根拠となります。

ペルセウスプロテオミクスはPPMX-T002とPPMX-T004の新規導出先を探すようですが、大きな契約は見込めません。

PPMX-T003は最新技術で作成された抗体で、ペルセウスプロテオミクスが最も力を入れている製品です。

同剤によるパイプラインは2本であり、先行する1本がフェーズ1試験実施中、もう一方が医師主導フェーズ1試験の準備中といった状況です。

要するに、投資家目線で見ると、期待の持てる製品(PPMX-T003)が1つであり、その2本のパイプラインが初期段階ということで、ペルセウスプロテオミクスの魅力は極めて低いことが現状です。




 2 創薬企業のIR更新情報(前営業日)

【ジーエヌアイグループ】

2022年12月期 第1四半期報告書

2022年12月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)

【キャンバス】

2022年6月期 第3四半期報告書

【シンバイオ製薬】

第三者割当による新株式及び第58回新株予約権の発行に関するお知らせ

【ペプチドリーム】

四半期報告書-第17期第1四半期(令和4年1月1日-令和4年3月31日)

【ペルセウスプロテオミクス】

2022年3月期決算説明会資料

事業計画及び成長可能性に関する資料

 3 創薬株価指数と主要株価指数

創薬株価指数 終値 前日比(%)
創薬平均株価 523円 -8円(-1.43%)
BR創薬株3種 1,420円 -20円(-1.37%)
BR創薬株7種 979円 -11円(-1.10%)
BR中型株指数 621円 -4円(-0.60%)
BR小型株指数 215円 -5円(-2.35%)
主要株価指数 終値 前日比(%)
TOPIX33業種別-医薬品 3,072円 +11円(+0.36%)
NASDAQ Biotechnology Index 3,616米ドル +18米ドル(+0.49%)
日経平均株価 26,660円 +113円(+0.42%)
NASDAQ 11,663米ドル -142米ドル(-1.20%)

 4 創薬株価指数とテクニカル指標

創薬平均株価構成銘柄:ジーエヌアイグループ、アンジェス、オンコセラピー・サイエンス、そーせいグループ、ナノキャリア、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、ペプチドリーム、オンコリスバイオファーマ、リボミック、サンバイオ、ヘリオス、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、Delta−Fly Pharma、ステムリム、メディシノバ、ファンペップ、ペルセウスプロテオミクス、モダリス、クリングルファーマ、レナサイエンス

BR創薬株3種構成銘柄:ジーエヌアイグループ、そーせいグループ、ペプチドリーム

BR創薬株7種構成銘柄:ジーエヌアイグループ、アンジェス、そーせいグループ、ペプチドリーム、サンバイオ、ヘリオス、ステムリム

BR中型株指数構成銘柄:アンジェス、サンバイオ、ヘリオス、ステムリム

BR小型株指数構成銘柄:オンコセラピー・サイエンス、ナノキャリア、カルナバイオサイエンス、キャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、カイオム・バイオサイエンス、キッズウェル・バイオ、オンコリスバイオファーマ、リボミック、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス、ソレイジア・ファーマ、Delta−Fly Pharma、メディシノバ、ファンペップ、ペルセウスプロテオミクス、モダリス、クリングルファーマ、レナサイエンス

 4 創薬企業の相場のまとめ




全体
値上がり銘柄数 8銘柄
値下がり銘柄数 14銘柄
変わらず 6銘柄
出来高 1,616万株
売買代金 861,175万円
時価総額 7,500億円
個別銘柄 終値 前日比(%)
ジーエヌアイグループ 1,069円 +51円(+5.0%)
アンジェス 356円 -9円(-2.5%)
オンコセラピー・サイエンス 63円 0円(0.0%)
そーせいグループ 1,151円 0円(0.0%)
ナノキャリア 214円 -5円(-2.3%)
カルナバイオサイエンス 834円 -27円(-3.1%)
キャンバス 175円 0円(0.0%)
デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 202円 0円(0.0%)
ラクオリア創薬 726円 -36円(-4.7%)
シンバイオ製薬 622円 -41円(-6.2%)
カイオム・バイオサイエンス 166円 -1円(-0.6%)
キッズウェル・バイオ 260円 -18円(-6.5%)
ペプチドリーム 1,717円 -58円(-3.3%)
オンコリスバイオファーマ 574円 -16円(-2.7%)
リボミック 172円 +1円(+0.6%)
サンバイオ 1,096円 +12円(+1.1%)
ヘリオス 805円 +8円(+1.0%)
ブライトパス・バイオ 82円 -2円(-2.4%)
窪田製薬ホールディングス 141円 0円(0.0%)
ソレイジア・ファーマ 78円 +2円(+2.6%)
Delta−Fly Pharma 820円 -150円(-15.5%)
ステムリム 718円 -15円(-2.0%)
メディシノバ 315円 +5円(+1.6%)
ファンペップ 202円 0円(0.0%)
ペルセウスプロテオミクス 361円 +2円(+0.6%)
モダリス 434円 -3円(-0.7%)
クリングルファーマ 577円 +1円(+0.2%)
レナサイエンス 398円 -5円(-1.2%)

 6 バイオテックレポート(BR:Biotech Report)からのお願い

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