ナノキャリア|高分子ミセル制抗癌剤「NC-6004」の開発中止のインパクト


「NC-6004」は抗癌剤シスプラチン(特許切れ)が、ナノキャリアの主要技術(ミセル化ナノ粒子技術)によって製剤された新規抗癌剤です。

同技術の特徴は、有効成分を体内全域に分布させてしまう従来型シスプラチン製品に比べ、癌細胞が存在する局所的な範囲にのみ有効成分を分布させることが可能であることです。

この特徴により、有効成分の量を減らすことが可能となり、結果として治療効果の増大と副作用の低減が見込めるというものでした。

しかしながら、「耳科用抗菌薬「ENT103」の製造販売承認申請のお知らせ」において、NC-6004による口腔、喉頭、咽頭、甲状腺などの部位に発生する頭頸部癌を適応とするフェーズ2b試験での主要評価項目の達成が困難という理由で、同試験を中止することを決定したと報告しました。

同試験の主要評価項目は無増悪生存期間を指標としたものであり、安全性や容認性が評価項目ではないことから、素直にNC-6004の治療効果が認められなかったということです。

NC-6004は膵癌を適応とするフェーズ3試験でも失敗していることから、ミセル化ナノ粒子技術をベースとし、NC-6004と同じメカニズムのNC-6300(軟部肉腫を適応)に対しても否定的な見解を持たざるを得ません。

NC-6004の導出先で、前述した試験を行ったOrient Europharma社がデータ解析の公開を行わない意思を示しているため、有効性を示せない理由は不明ですが、かねてより同技術の課題は容量だと言われています。

NC-6004の開発目的は外来での治療を可能とすることでにあるため、容量を増やして有効性を求めるがあまり、従来型シスプラチン製品と同等の副作用が出ては開発の意義がありません。

故に、NC-6004の目的に沿った容量の増加が可能かどうかが鍵であり、また、それを踏まえて最初から試験をやり直すかどうかに注目です。

また、仮に容量増加を行う程の余裕がない場合、それはナノキャリアのミセル化ナノ粒子技術の意義が問われる状況に陥ります。

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