ヘリオス|PMDAの審査の前提を見誤る形に。HLCM051の解析方法が論点。


ヘリオスは体性幹細胞再生医薬品「HLCM051」を用いてARDSパイプランの早期承認を目論んでいましたが、本日発表したIR資料「体性幹細胞再生医薬品HLCM051を用いたARDS治験に関する承認申請状況について」によると、承認までの道のりが思いの外遠いことが判明しました。

これは、ヘリオスが3月末に行ったPMDA(医薬品医療機器総合機構)との面談の中で、ARDSに対するHLCM051の追加データを求められたことによるものです。

再生医療等製品の条件及び期限付き承認制度にあたっては、ステムリムの「レダセムチド」が表皮水疱症に対する適応において、同制度の下、追加データを求められたことがあります。

ステムリムの場合は有効性解析対象が9人と極めて小規模なものだったため、PMDAが信頼性に不安を感じてもおかしくはありませんが、ヘリオスの場合は同60人と、十分な規模を持ち合わせています。

となると、PMDAはHLCM051の有効性に対して疑問を持っていると考えて宜しいでしょう。

例えば、ヘリオスは国内・海外試験の統合解析結果において、「国内試験と海外試験のデータを、年齢及びP/F比で調整を行い統合した結果、VFDの改善は平均5.4日、P値は0.036(片側)となった。」と提示していますが、同P値は信頼区間90%でのものであり、信頼区間が95%である場合、P値は0.05以上であった推測出来ます。

事業計画及び成長可能性に関する事項(参照:ヘリオス)

また、片側検定は両側検定に対し、その性質上、有意差が出やすくなります。

では、ヘリオスの同解析がHLCM051の効果を測る上で間違っていたのかというと、そうではありません。

例えばフェーズ1やフェーズ2などの小規模治験では、解析対象の少なさから信頼区間を95%ではなく90%と設定することはあります。

片側検定に関しても、治療薬の有効性の高さを検定する際には用いられます。

ただし、これらは一般的な方法ではありません。

小規模治験で信頼区間を90%とし有意差を出したことは、承認審査に直結する大規模治験に移った場合に、統計モデルの性質上、信頼区間95%でも十分に有意差を出す可能性があります。

しかし、信頼区間90%も片側検定も、大規模治験(信頼区間95%・両側検定)を想定して行うため、ヘリオスが有効性があるとして提出したデータでは、PMDAの目から見ると有効性が示しきれていないと写ったのではないでしょうか。

そのため、PMDAはヘリオスに対して追加データを求めたものだと考えられます。

なお、重ね重ねになりますが、信頼区間90%も片側検定も、立派な統計解析方法です。

その方法においてヘリオスが行ったHLCM051の解析では、統計学的に有効性が認められています。

今回PMDAがヘリオスに対して追加データを求めたのは、承認審査において一般的な方法による解析に拘っているからだと考えられます。

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