サンバイオ|〈米国神経学会の発表に向けて〉米国における外傷性脳損傷治療薬『SB623』の承認申請に必要なこと


SB623による慢性期外傷性脳損傷を適応とするフェーズ2治験(STEMTRA試験)において、48週時点でのFMMS(フューゲルメイヤー運動機能評価)変化量が対プラセボ比で有意な結果が得られなかったことに関して、「サンバイオ|外傷性脳損傷治療薬『SB623』の有効性に対する統計学的考察」で解説しました。

そして、フェーズ3治験で48週時点での有意な結果を出すために必要なエンロール数を「サンバイオ|『SB623』による外傷性脳損傷フェーズ3治験で有意な結果を出すために必要なエンロール数の統計学的推定(未修正プロトコル)」と「サンバイオ|『SB623』による外傷性脳損傷フェーズ3治験で有意な結果を出すために必要なエンロール数の統計学的推定(修正プロトコル)」に分けて推定しました。

以上により、SB623が48週時点で統計学的有意性を出すのに必要なエンロール数が、おおよそ100人と見込まれましたが、米国での承認申請にはFDAが求める規模や評価項目での治験が必要となり、有意性を出せるからといって小規模治験を行ったとしても承認には至りません。

では、FDAが求めるSB623の外傷性脳損傷治験はどの程度なものなのかを考察していきます。

SB623は外傷性脳損傷を適応とする開発品として、FDAからRMAT(再生医療先端治療)の指定を受けています。

RMATは日本の再生医療等製品の早期承認制度と類似する部分もありますが、ブレークスルーセラピー指定を利用できる再生医療品ということであり、日本の再生医療等製品の早期承認制度のように承認審査の難易度が下がるという訳ではありません。

そのため、他の医薬品と同様にフェーズ3治験の実施が必要と予想されます。

これまで(2021年12月31日まで)、RMAT指定を受けた再生医療品は3品存在します(RETHYMIC、StrataGraft、BREYANZI)。

RMAT指定の承認済み再生医療品(作成:バイオテックレポート)

RETHYMICの承認審査において、小児先天性無胸腺症は希少疾患ながらも154人の患者を解析対象としてデータを取得しました。

そのうち、RETHYMIC群には105人が割り当てられ、有効性・安全性解析に95人、安全性解析に10人のデータが用いられました。

StrataGraftの承認審査ではフェーズ3治験(エンロール:71人)のデータが主要解析結果として用いられています。

同フェーズ3治験では非盲検の1グループモデルであり、71人全員が治療を受けました。

皮膚の移植必要部位の面積の変化(3ヶ月後)が主要評価項目であり、StrataGraft投与によって移植が必要な範囲を96%削減する効果が得られました(p<0.0001)。

BREYANZIは大規模なフェーズ1治験(非盲検、1グループモデル、エンロール:314人)を実施し、BREYANZIが投与された268人の解析結果を基に承認審査が行われました(BREYANZI投与群は投与回数が異なる2群に分けられた)。

3例と数は少ないですが、以上を読み解くと、FDAの承認審査において単一適応症に対する再生医療品の累計投与実績が100人以上、主要解析結果の投与群が70人以上が求められます。

サンバイオ|『SB623』による外傷性脳損傷フェーズ3治験で有意な結果を出すために必要なエンロール数の統計学的推定(修正プロトコル)」のプロトコルを前提に考えると、SB623(500万個)を投与された患者数は現時点で15人であるため、フェーズ3治験では85人のSB623投与群が必要です。

SB623投与群とプラセボ群の比が1:1の場合、最低でも170人規模のエンロールが必要です。

しかしながら、170人のエンロールにより、SB623による外傷性脳損傷の治療効果は統計学的に有意になる可能性が高く、また、SB623の投与実績でも承認申請に必要な数が満たせます。

SB623のこれまでのレポートをまとめると、STEMTRA試験と同様のプロトコル下ではSB623の48週時点での有効性を担保することは難しいものの、投与量をSB623(500万個)に絞ることで有意な結果を得られる可能性は高いです。

また、エンロール数を170人にすることで承認申請に必要な投与実績も十分に積み上げることが出来ます。

STEMTRA試験を以て米国でのSB623の外傷性脳損傷治療薬としての承認が難しい場合、上記の通り、SB623(500万個)による170人規模のフェーズ3治験を行うことで承認申請まで辿り着けると推測します。

 

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