サンバイオが米国神経学会(AAN: American Academy of Neurology)において発表予定の「Efficacy and Safety Outcomes in Patients with Chronic Traumatic Brain Injury」と題した抄録が、2022年3月12日(日本時間)に同学会から発表されました。
同学会では既知であった24週時点でのFMMS(フューゲルメイヤー運動機能評価)変化量のプラセボ比の他、48週時点でのFMMS変化量の比を発表されました。
主要評価項目である24週時点のFMMS変化量では、日本国内で再生医療等製品に対する条件および期限付承認制度を活用した承認申請を行っている通り、統計学的に有意な改善が認められました。
しかしながら、48週時点での同変化量ではSB623投与群で改善の傾向こそ見せているものの、有意性は認められませんでした。
48週時点においてSB623投与群で改善の効果が認められなかったという同結果の解釈ですが、なぜこの様なことが起こったのかを統計学的に考察します。
本分析結果を読む上でまず注目すべき点は、解析の上で最小二乗平均とその標準誤差を結果として提示していることです。

解析手法で最小二乗平均を採用する利点は交絡バイアスを考慮した解析が行えることです。
SB623による慢性期外傷性脳損傷フェーズ2治験においての交絡バイアスとなる条件は、例えば、年齢や人種や性別であったり、罹病期間やFMMSのベースラインスコアであったり、または、SB623投与群における間葉系幹細胞の投与量などが考えられます。
フェーズ2治験では多くの情報を取得し、承認審査に向けたフェーズ3治験に繋げる治験であるため、交絡バイアスは大きくなる傾向があります。
バイアス調整後の最小二乗平均を解析で用いて有意性が検出されない場合、フェーズ3での良好な結果への伸び代が少ないことを意味します。
そのため、同様の治験を再度行ったとしても、SB623の48週時点でのFMMS改善効果は認められないと考えられます。
続いて、標準誤差を提示している点についてですが、この提示は投資家に対して誤解を招く表現です。
数ある治験結果の報告で、投資家が多く目にする項目は「平均値」と「信頼区間(95%または90%)」だと思います。
しかし、本結果では「平均値」と「標準誤差」を提示しています。
標準誤差を平均値からの区間とする場合、信頼区間(95%)の約半分の大きさとなります。
【標準誤差と信頼区間の関係(t分布)】
・信頼区間 = 平均値 ±2.014(2.145) × 標準誤差
(注)2.014 = SB623投与群(46)の場合、2.145 = プラセボ群(15)の場合。
そのため、SB623の信頼区間(95%)を先程のチャート図に加えると下図の様になります。

統計学的に有意な結果となった24週時点でも、信頼区間の範囲が広いため、2群間の信頼区間はギリギリのところで重なりを回避している状態です。
48週時点でも信頼区間の重なりを回避をするためには、平均値の差を広げること、および/または、信頼区間を狭めることが求められますが、24週から48週時点にかけてSB623投与群では平均値の底上げには及ばず、プラセボ群では信頼区間の範囲が広がってしまいました。
その結果、48週時点において統計学的に有意な結果が得られませんでした。
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