サンバイオは2022年2月10日、『国内SB623慢性期外傷性脳損傷プログラム「先駆け総合評価相談」の終了と「承認申請」の準備開始について』と題し、日本において再生医療等製品に対する条件および期限付承認制度を活用した『SB623』の慢性期外傷性脳損傷治療薬としての承認申請を一ヶ月程度(2022年3月10日頃)に行うと発表しました。
上記先駆け審査指定制度は申請後6ヶ月以内に承認審査を完了(目標)する制度のため、順調に進めば2023年にはSB623が日本国内で流通し始める見込みです。
なお、条件および期限については、販売先を専門的な医師や設備を有する医療機関に限定する条件や、原則として7年を超えない範囲内の期限を想定しています。
また、承認後は期限内に使用成績に関する資料を添付して、再度承認申請が必要です。
それでは、SB623が承認された場合、期限内(2029年9月と過程)のSB623の売上高を推定します。

医薬品の薬価は類似薬がない場合には、原材料費、製造経費等を積み上げる、原価計算方式が用いられます。
類似薬かどうかは、効能および効果、薬理作用、組成および化学構造式、投与形態・剤形区分・剤形および用法の観点から判断され、SB623とニプロ社のヒト(自家)骨髄由来間葉系幹細胞を用いた外傷性脊髄損傷治療薬『ステミラック注』との類似性が議論されると思われます。
なお、ステミラック注はヒト(自家)骨髄由来間葉系幹細胞を用いた外傷性脊髄損傷治療薬であり、2018年に上記制度を活用し承認されています。
そして、ここではSB623の薬価をステミラック注とNovartis社のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)『キムリア点滴静注』を参考にした原価計算方式によって推定します。
ステミラック注の製造原価は約1,000万円(9,991,755円)、薬価は約1,500万円(14,957,755円)です。
また、投与する間葉系幹細胞の量は1回5,000万~2億個(最大投与量:334万個/kg)です。
SB623では間葉系幹細胞の量を250万~1,000万個と想定されるため、間葉系幹細胞の量の面ではSB623の方がステミラック注に比べて少ないです。
ただし、SB623では間葉系幹細胞をシンプルに量産するのではなく、遺伝子導入も製造過程に加えているため、製品原価は高騰する傾向です。
細胞への遺伝子導入原価としてはキムリア点滴静注が参考になります。
同治療薬ではB細胞性急性リンパ芽球性白血病の患者に対して体重50kg以上の場合、1,000万~2億5,000万個のCAR-Tを投与します。
また、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の場合では6,000万~6億個のCAR-Tを投与します。
そのような投与条件下において、製造原価は約2,360万円(23,632,062円)、薬価は3,350万円(33,493,407円) とされています。
以上を考慮すると、細胞培養の量の観点(少培養量による製造原価の押し下げ要因)、遺伝子導入の観点(工程数の増加による同押し上げ要因)、間葉系幹細胞の性質の観点(他家は自家に比べて大量生産向きのため、同押し下げ要因)より、SB623の製造原価および薬価はステミラック注と同程度の1,000万円前後、1,500万円前後となるのではないでしょうか。
そして、条件およびび期限付承認を得た後、サンバイオは期限内にSB623の市販後調査を行う必要があります。
その市販後調査の規模の推定は難しいものの、薬事・食品衛生審議会においてアンジェス社の『コラテジェン筋注用』の市販後調査のエンロール数に関して議論され、120例(投与群で80例)の実績を積めるかどうかが懸念された背景があります。
ステミラック注の市場後調査の規模は大きく、エンロール数600例(投与群200例)であることを考えると、少なくともSB623においても100例以上のエンロール数が見込まれます。
しかしながら、SB623は投与方法が困難であることや、保険適応になるかどうかも不明なため、同エンロール数はより小さく見込んだ方が良く、その規模は最小の100例(投与群70例)と仮定します。
これらを踏まえ、薬価1,500万円、投与数70人とした場合、市販後調査期間中における売上高は10億円程度になると推定されます。
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